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公開ディスカッションに向けての問題整理(その3)

3.マニフェストと総合計画(基本計画)の期間と内容は一致している?

前回、マニフェスト(ロードマップ)と総合計画(基本計画)の期間や内容がバラバラだと困ったことになるということを書きました。

ここでもう一度、(前)岐阜県多治見市長の西寺雅也氏に登場していただいて、何故マニフェストと総合計画が一致していないといけないのかということを語っていただきたいと思います。

(2003年の地方自治土曜講座での講演録より引用)

 ここで私たちが考えておかなければならない重要なことは、現職の首長にとっては実は「総合計画」自身が本来「マニフェスト」でなければならない。もし「総合計画」からかけ離れたようなことを私が言い出したとすれば、おかしなことになってしまいます。私は現職の市長ですから、総合計画をつくった当事者です。その私が総合計画から掛け離れたことを公約として出すというのは自己否定以外のなにものでもないということになってしまいます。本来、行政全体が総合計画を実施するということで成り立たせているはずですが、それから全く掛け離れた政策、公約として出すこと自体がおかしい話であって、もし本当にその政策をやらなければならないのであれば、最初から「総合計画」の中に組み込まれていなければならないはずです。ですから、現職の「マニフェスト」というのは本来「総合計画」そのものと思っています。

また、「第5次草津市総合計画」を策定される際に出された方針(計画策定の趣旨)では、「基本構想については平成32年度(2020年度)の将来像を目指し、基本計画については、市長マニフェストとの整合を図る計画とします。」と位置づけています。 このことから、草津市でもマニフェストと総合計画(基本計画)の整合性を重視していると考えられます。

そこで、このマニフェストと総合計画との整合性という物差しで具体的に検証してみることにします。

(1) 実施期間の比較

まず、マニフェストと総合計画の期間についてはどうでしょうか。

分りやすくするために年表を作ってみました。

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うぅ~ん。どうもピタッと来ないなぁ・・・

2008年2月に任期満了による市長選挙がありました。

この時は、NPOまちづくり本舗と社団法人草津青年会議所が共催でマニフェスト型公開討論会を実施しました。その結果は、投票率38.5%、投票数17,584票対17,281票(303票差)で橋川氏が当選され、同年3月より第1期目となる橋川市政がスタートしました。

当時、第4次草津市総合計画があり、その目標年度である2010年まで続いていました。そこで、市長就任直後の2008年度と2009年度の2年間をかけて第5次草津市総合計画が策定されました。

このタイミングは、ものすごく良かったと思います。新市長自らが、新たらしい総合計画を白紙の状態からつくることができた訳ですから。  それが出来るまでは、マニフェストに基づいて施策を実行し、更に総合計画(基本計画)の中にしっかりと落とし込むことも可能だったことでしょう。

でも、第2期目となるとものすごく収まりの悪い状態に陥っています。

マニフェスト(ロードマップ)と総合計画(基本計画)が1年ずつズレてしまっているのです。

どう考えれば良いのでしょうか?

もしかして、橋川市長が2期目の出馬や後継者を推薦する可能性や意思が全く無かったから、次の市長になるであろう方のために、第2次基本計画を策定する時期をあえてズラした・・・とか。  あるいは、私のような凡人には分からない何らかの事情があるのか。

この点は、2月19日に開催する公開ディスカッションの場で橋川市長にお聞きしてみたいと思います。

次回は、マニフェスト(ロードマップ)と総合計画(基本計画)の内容が一致しているのかどうかについて検証します。(つづく)

公開ディスカッションに向けての問題整理(その2)

2.総合計画とロードマップ

ロードマップは、草津市長が市長選で掲げたマニフェストを行政の実施計画として位置づけ、事業を具現化するために作られたものです。
このロードマップと総合計画との関係はどのようになっているのでしょうか?

現在の「第5次草津市総合計画」を策定される際に出された方針には、次のように書かれています。

計画策定の趣旨
「基本構想については平成32年度(2020年度)の将来像を目指し、基本計画については、市長マニフェストとの整合を図る計画とします。」

計画の概要
「基本計画 (マニフェストとの整合を図る期間設定とします。)」
「基本計画の見直し 基本計画の考え方をマニフェスト発表後に見直しを行い、その後4年間を基本に計画を進めることとするため、目標は平成32年度(2020年度)の将来像を目指します。」

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 以上のことから、総合計画の基本計画は4年後ごとの市長任期におけるマニフェストとの整合性を図るため内容や期間を定めるということが策定方針として出されているようです。
これは非常に重要なことだと思います。

というのは、行政の中で最上位に位置づけられている事業計画とマニフェストの期間や内容がバラバラというのでは、大変困ったことになるからです。
まず、期間に関しては例えば選挙で市長が変わった場合は、自分のマニフェストに基づいて事業を行うのが通常であり、前任市長から後継指名されるなど政策を踏襲する場合を除いて通常は前任の市長が作った事業計画をそのまま継続するということは考えられません。
自分が作ったマニフェストがあるのに前任の市長が作った事業計画に基づいて施策を行わなければならないというのであれば、そもそも誰がやっても政策は変わらないということでありこれでは選挙の意味も無くなります。

また、マニフェストと総合計画との整合性について、双方の施策が違っても良い場合というのは、ものすごく特化した目玉政策のみをマニフェストに掲げて、それ以外は総合計画どおりに実施するというような特殊なケースに限定されます。

ちょっと古いのですが、手元に「多治見市の総合計画に基づく政策実行 -首長の政策の進め方」(公人の友社)という冊子があります。

51pjc8Cs2DL._SS500_当時(2003年)、岐阜県多治見市の市長だった西寺雅也氏(現山梨学院大学教授)が地方自治土曜講座で講演した内容をまとめたものですが、その中で総合計画と首長選挙の期間を整合させることの必要性について次のように述べています。

「(総合計画は)多くの場合計画期間は10年で作ってあり、その中間で見直しますので、5年毎に見直すことになりますが、そうすると首長の任期4年と計画期間5年ということになり、ズレが生じて、結局バラバラになってしまいます。バラバラになって、例えば、私が市長になったときに前の市長が作ったばかりの総合計画をどうするのか、逆に私が辞めるときに作ったものを次の市長が実行しなければならないといったことになります。こういうことを避けるために4年毎で見直しをするというように計画の時期も、見直しの時期あるいは策定の時期も首長の任期と合わせるように作ったのです。」

以上のことを念頭に置いて、草津市の総合計画と首長選挙で掲げられるマニフェストとの関係を分析しようと思うのですが、ここで大きな難問(疑問)が待ち受けています。

というのは、次年度から実施が予定されている「第5次草津市総合計画第2期基本計画(案)」の中で位置づけられようとしているのは、マニフェストでは無く、それを基に作成された行政の4年間に渡る事業実施計画である「ロードマップ」だからです。

「手が混んでいる」というふうに表現して良いのかどうか分かりませんが、何かストレートにイメージしにくいものであることは間違いありません。

市長選で掲げられたマニフェストが選挙後(今回は無投票)に公約(市民との契約)となったことから、それを行政内で着実に実行するためにロードマップが作成され、そのロードマップを行政の最上位の事業計画である総合計画の基本計画の中に位置づけようとしているのが「第5次草津市総合計画第2期基本計画(案)」なのか、それとも基本計画とは全く別個のオプションとしてロードマップを捉えているのか・・・?

もう少し詳しく分析していかないとモヤモヤした感覚が払拭できません。(つづく)

公開ディスカッションに向けての問題整理(その1)

(はじめに)

2月19日に開催する公開ディスカッション「『さらに草津』宣言から『ロードマップ』に!」での議論を深めるために、何回かに分けて問題点を整理していきたいと思います。

特に、マニフェストおよびロードマップと総合計画との関係について「釈然としない」という感覚が離れないので、その点を中心に調べていく予定です。

1.総合計画と基本計画

多くの自治体において、施策や行政運営全般を対象とした最上位の計画として総合計画が策定されています。

草津市では、2010年度(平成22年度)から2020年度(平成32年度)の期間を目標年次とする第5次草津市総合計画があります。

総合計画の名称は、「出会いが織りなす ふるさと“元気”と“うるおい”のあるまち草津」。

総合計画の策定では、総合計画策定市民会議や草津市総合計画審議会などの設置、「座・でぃすかす」や市民意識調査、パブリックコメントなどの実施を通じて市民ニーズの掘り起こしが行われました。

総合計画は、「草津市の現状と課題」「基本構想」「基本計画」で構成され、その中の「基本計画」は最初の第1期は2012年度(平成24年度)までの3年度分、その後4年度分の期間が2回で合計11年度分の3期に渡る長期の計画となっています。

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これに関連して、先日(平成25年1月22日)草津市総合計画審議会から市長に対して基本計画の2期目となる「第5次草津市総合計画第2期基本計画(案)」が答申されました。

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 この答申には、「草津川跡地の空間整備」「中心市街地の活性化」「コミュニティ活動の推進」という3つのリーディング・プロジェクト(重点方針)が示されています。

また地域経営の基本方針として「公共公益的な活動領域の広がりへの対応」(行動主体の役割分担と協働、コミュニティ活動推進の支援)及び「『地域経営』のための行財政マネジメント」(健全な行政運営、組織力・職員力の向上、市民参加と市民との情報共有の推進等による透明性の向上)が掲げられています。

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 そして、分野別の施策では「第1期基本計画」で示されていた指標を評価するための市民意識調査を実施することや具体的な数値目標が示されています。

ここで注目すべきところは、各施策の中には「この分野に関連するロードマップ事業」という項目があることです。

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これは一体何を意味しているのでしょうか? (つづく)

草津市民参加条例(案)について

 

最近、市民参加の手法は国レベルでも積極的に取り入れられています。

例えば、エネルギー政策として2030年の電力に占める原発割合を「0%」「15%」「20~25%」のいづれにすべきかを国民的議論を経て決めることを目的として行われた討 論型世論調査(DT)の手法は記憶に新しいものです。

また、平成21年5月からスタートした裁判員制度は、国民が裁判に参加する制度として身近なものとなっています。

更に、公開の場で実施された「事業仕分け」や「提言型政策仕分け」は、事業や予算のありようを国民参加によって検討するための手法の一つです。

一方、草津市では、「第5次総合計画の基本構想案」の策定に際して、参加対象者の無作為抽出による「座・でぃすかす」が開催されました。

これは、ドイツで開発された「プラーヌンクスツェレ」を参考にしたもので、新しい市民参画手法として注目されます。

また、平成21年度と平成22年度には、草津市が行う事業の必要性やその担い手について市民判定員が判断するという市民参加型の事業仕分けが行われました。

(平成22年度は無作為抽出した4,000人の市民に案内状を送付し303人が承諾し、抽選で120人の市民判定員が決定)

更に、平成21年度から実施されている予算編成過程の公開についても、広義での市民参加手法の一つでは無いかと思います。

そうした中で、現在「草津市市民参加条例(案)」へのパブリックコメントが実施されています。

市民参加は「自治」の根幹をなすものであり、また民主主義の基本要素であり促進剤でもあることから、「草津市市民参加条例(案)」へのコミットメントは私たち市民にとって非常 に大切なことではないでしょうか。

これまで、「草津市市民参加条例(案)の“ここが分からん!”」シリーズでは、いくつかの疑問点について問題提起してきましたが、より具体的な提案について検討していきたいと思います。

以下は、提案に向けてのメモです。

 

条例案の前文では、「・・・・このことから、草津市自治体基本条例のもと、市政に参加する権利を有する市民が、より積極的に市政に参加できるよう、・・・」としている点について 、多治見市市民参加条例を参考に「市民が市政に参加する機会を保障」「市民自治の確立」といった文言 を入を入れる。

条例案の「市民参加の手法」として (1) アンケート等の意向調査 (2) 審議会等の設置 (3) パブリックコメント (4) 市民説明会等 の4項目が具体的手法として示されているが、 伊達市市民参加条例を参考に、市民による政策提案を明記すべき。また、印西市市民参加条例を参考に、市民会議の手法も入れる。

更に、条例案では 「前項各号に掲げる効 果を得るのに適した手法」「執行機関は、市民参加の新たな手法の開発に努めるものとする。」と記載されてはいるが、より積極的な姿勢を示すために多治見市市民参加条例を参考に「  複数の手法による参加の機会の提供に努めること。」「常に最も適切な参加手法で行うよう検討し、継続してこれを改善すること。」「より効果的と認められる新たな参加手法があると きは、これを積極的に用いるように努めること。」に変更する。

 

《参考1》  伊達市市民参加条例より抜粋

 第3章 市民による政策提案 (市民による政策提案)   第16条 市民は、市民10人以上の連署をもって、その代表者から市の機関に対し、行政活動について、次に掲げる事項を示して、自発的に政策を提案することができます。なお、政策提 案の提出方法は、第9条第3項に規定する提出方法に準ずるものとします。   (1) 現状の課題   (2) 提案の内容   (3) 予想される効果    2 市の機関は、次に掲げる事項を公表して、市民に対し、行政活動について、提案を求めることができます。   (1) 提案を求める目的   (2) 提案者の範囲   (3) 提案の方法   (4) その他提案に必要な事項    3 市の機関は、前2項の規定により提案された行政活動について、総合的に検討し、検討結果を次条に規定する伊達市市民参加推進会議に通知し、意見を求めるものとします。    4 市の機関は、第1項及び第2項の規定により提案した市民に対し、検討結果とその理由及び伊達市市民参加推進会議の意見を通知するとともに公表するものとします。

 

《参考2》 印西市市民参加条例より抜粋

 (市民会議手続)  第10条 市は、行政活動の課題及び問題点等に対して複数の市民等との意見交換、意見形成等を図る場合は、あらかじめ対象となる市民等を定め、その市民等及び市又はその市民等の相 互の議論により一定の方向性を見出すことを目的とする集まり(以下「市民会議」という。)を設置することができる。   2 市は、市民会議の開催にあたっては、次に掲げる事項を事前に公表しなければならない。  (1) 議題  (2) 開催日時  (3) 開催場所  (4) その他必要と認める事項

草津市市民参加条例(案)の“ここが分からん!” その4

 

 そろそろ、草津市市民参加条例(案)に何故、市民会議やワークショップ、公聴会、政策提案制度などの参加形態のことが謳われていないのか“わからん”という内容のことを書かなければならないと思ってはいたのですが、既にその答えを自分の頭で探しに行っています。

 そうなると、なんだか過去の話のように思えてきたので、一番肝心な話ではありますが省略させていただきます。 m(_ _)m  

 条例案に、市民会議やワークショップ、公聴会、政策提案制度などの参加形態のことが謳われていないということは、前回の投稿記事「参考資料と学習メモ編」をご覧いただければお分かりいただけるかと思いますのでご一読ください。  

 

 では何故、市政への市民参加の形態が条例案では限定的にしか書かれていなのか? ということについて仮説を考えてみたいと思います。

 もしかして間違っているかも知れませんが、あえてズバリ言います。

 それは、市政について市民は自治体としての草津市に信託している、と規定しているからなのでは無いかと思います。 

 そもそも、草津市市民参加条例(案)の根拠となっている草津市自治基本条例の名称「自治基本条例」は、非常に特殊です。

 全国初として知られている北海道ニセコ町の「まちづくり基本条例」をはじめとして、「自治基本条例」や「 協働のまちづくり基本条例」と名付けられているものが大半です。ちなみに、2012年9月時点で全国で253の自治体がこうした条例を制定していますが、「自治基本条例」という特殊な名称を付けているのは草津市だけなのです。(多治見市では、この名称のものが審議未了で廃案になった経緯もあります。

(参考1:全国の設置状況 http://www16.plala.or.jp/koukyou-seisaku/policy3.html

(参考2:多治見市 http://www.city.tajimi.gifu.jp/kikaku/constitution/index2.html )

(参考3.:土山希美枝氏http://www.city.kusatsu.shiga.jp/www/contents/1275890876027/activesqr/common/other/4a457fae003.pdf  

 全国初として知られている北海道ニセコ町の「まちづくり基本条例」をはじめとして、「自治基本条例」や「 協働のまちづくり基本条例」と名付けられているものが大半です。

 「自治基本条例」という名称は、1994年に北海道先駆自治体研究会で松下圭一氏が「自治体基本条例」という言葉を使ったのが恐らく最初です。また、辻山幸宣氏が基本条例とは「(市民が)自治体政府に対して 信託している内容を明示したもの」であると定義していることも関係していると思うのですが、その理念は、日本国憲法の次の定義に基づいたものだと考えられます。

 そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。(日本国憲法前文)

 しかし、本当にこれで良いのでしょうか?  これが、今回の“わからん”シリーズの根底にあるものであるのではないかと思っています。 

 国政の場合は、選挙を通じて「信託」するというのが正しいのですが地方自治の場合はこれだけではありません。 地方自治では、「信託」=間接民主主義と直接民主主義の相互作用や融合が肝要なのではないでしょうか。 

 例えば、憲法法第92条の「地方自治の本旨」(地方公共団体の『団体自治』及び『住民自治』の二つの意味における地方自治を確立すること)から位置づけられている地方自治法においては、自治を徹底するために制度的にも「信託」(自治体の長や議会選挙など)という間接的参加形態と並行して直接的参加形態である条例の制定・改廃の請求権や監査請求、議会や首長、主要公務員の解職請求といっことが保証されています。 

 また、地方分権推進委員会の中間報告(平成8年3月29日)では、自己決定権の拡充に関して次のとおり示されています。

 それは、究極のところ、身のまわりの課題に関する地域住民の自己決定権の拡充、すなわち性別・年齢・職業の違いを越えた、あらゆる階層の住民の共同参画による民主主義の実現を 意味する。この地方自治レベルにおける住民主導と男女協働の民主主義を基礎にして初めて、国政レベルにおける議会政治もまた一層健全なる発達を遂げることになるものと考える。

 更に、第27次地方制度調査会「今後の地方自治制度のあり方に関する答申について」では、次のとおり記述されています。

 地域においては、コミュニティ組織、NPO等のさまざまな団体による活動が活発に展開されており、地方公共団体は、これらの動きと呼応して新しい協働の仕組みを構築することが求められている。

 基礎自治体は、その自主性を高めるため一般的に規模が大きくなることから、後述する地域自治組織を設置することができる途を開くなどさまざまな方策を検討して住民自治の充実を 図る必要がある。また、地域における住民サービスを担うのは行政のみではないということが重要な視点であり、住民や、重要なパートナーとしてのコミュニティ組織、NPOその他民間セクターとも協働し、相互に連携して新しい公共空間を形成していくことを目指すべきである。

 

  以上のことからも、自治体は、市民が選挙で選んだ首長と議会という二元代表制と共に、市民の直接参加という形態の3つの緊張関係で動かしていくものだと思うのですが、その原点が「自治基本条例」という特殊な存在で曖昧になり、更に「(仮称)草津市協働のまちづくり条例」の制定に向けて取り組みが行われるなど複雑な様相を帯びている中で、市民参加条例(案)を単独でどう評価していいものか・・・。  (続く?)

草津市市民参加条例(案)の“ここが分からん!”(参考資料と学習メモ編)

《前文および目的の検討資料》

流山市民参加条例    (目的)  第1条 この条例は、流山市自治基本条例(平成21年流山市条例第1号)第16条の規定に基づき、市民等の市政への参加(以下「市民参加」という。)の手続その他必要な事項を定め、市民自治を推進することを目的とします。

川口市市民参加条例    (目的)  第1条 この条例は、川口市自治基本条例(平成21年条例第6号)第7条第5項の規定に基づき、市民の市政への参加のための基本的な事項を定めることにより、市政の運営に対して、市民が自ら意見を表明し市政に参加する権利を保障し、もって市政の主権者である市民が、市民として幸せに暮らせる地域社会を築くことを目的とする。

→ 草津市の条例案では、草津市自治体基本条例第8条に基づいて策定されるという位置づけであるにも関わらず、その文言が入っていないのは何故?

草津市市民参加条例(案)   (目的)  第1条 この条例は、市民参加が円滑に機能するよう、必要な要件や手続等基本的な事項を定めることにより、市民参加を推進することを目的とする。

北広島市市民参加条例   穏やかな丘陵台地の広がる北広島市は、緑の豊かな自然と都市機能が調和したまちです。わたしたちは、明治の初めに入植した広島県人をはじめ多くの先人たちの労苦と知恵によって築いてきた歴史と文化を受け継ぎ、共に助け合ってこのまちを発展させてきました。今日、時代の変化とともに生活の移り変わりや価値観の多様化によって、新しい視点に立ったまちづくりを進める必要性が高まっています。 市民は地方自治の主役であり、市政への参加は市民の権利です。市民も市政の担い手であることを自覚するとともに、それぞれの経験や知識を積極的に市政に反映し、まちづくりに活かすことが大切です。そのためには、市民と市が情報を共有し、相互理解を深めながら協働して、自らの責任と役割を果たしていくことが求められます。 市民参加は、自分のまちのことは自分で決め、つくるという自治本来の姿を実現するものです。わたしたちは、将来にわたり市民参加への歩みを重ねることを確かめ、平和と安心のもとに市民みんなが誇りを持てるまちにするために、ここに「北広島市市民参加条例」を制定します。

→この条例では、「わたしたち」とは、市民=個人、市民活動団体等の組織、自治体なども含まれる概念であると読み取れる。  

 草津市の場合は、「わたしたち」とは市民のことであり、自治体は草津市と表現し「わたしたち」には含まれていない。  

 自治体は、市民が地方自治の主役(主権者)でありその一部と見るのか、地方政府として市民が信託する別物と見るのかの違いか?

 

《草津市の条例案で書かれていないこと》

流山市民参加条例 (市民参加の方法) 第6条 (3)意見交換会の開催 (4)公聴会の開催 (5)政策提案制度

※公聴会とは、自治体における政策の決定や運営について、関係者(公述人)の意見を直接聴いて施策に役立てる手続きのこと。

和光市市民参加条例   (市民参加の実施)  第8条 市の機関は、対象事項の性質、影響及び市民の関心度を考慮して、適切な時期に前条に定める方法のうちから、1以上の適切な方法により行うものとします。  2 前項の場合において、市の機関は、より多くの市民の意見を求める必要があると認めるときは、複数の市民参加の方法を併用するよう努めるものとします。   (市民政策提案手続)   第9条 市民政策提案手続における提案は、年齢満18歳以上の市内に住所を有する者が10人以上の連署をもって、その代表者から市の機関に対して対象事項(第6条第2項に該当するものを除きます。)について行うことができます。  2 市民政策提案手続において、市の機関が政策等の提案を求めようとするときは、提案を求める政策等の目的、提案できる者の範囲、提案の方法その他提案に必要な事項を公表するものとします。 3 市の機関は、提案のあった政策等について総合的かつ多面的に検討し、検討結果及びその理由を提案した者(代表者がいるときは、その代表者)に通知し、原則として公表するものとします。

八王子市市民参加条例   第5条  この条例における市民参加の方法は、次のとおりとする。  (2) 審議会等(法令、条例等に基づき設置された審議会、協議会等をいう。以下同じ。)の開催  (3) 市民会議(会議に参加した市民自身が会議を運営し、報告書、計画書、条例素案等を作成するための会議をいう。)の開催

苫小牧市市民参加条例   第4条    (2) 市民会議(当該政策についての調査及び検討を行うため、市民が自主的に運営する会議をいう。以下同じ。)を設置し、その調査及び検討の結果について報告を受ける方法  (3) 公聴会を開催する方法

印西市市民参加条例    (市民会議手続)  第10条 市は、行政活動の課題及び問題点等に対して複数の市民等との意見交換、意見形成等を図る場合は、あらかじめ対象となる市民等を定め、その市民等及び市又はその市民等の相互の議論により一定の方向性を見出すことを目的とする集まり(以下「市民会議」という。)を設置することができる。  2 市は、市民会議の開催にあたっては、次に掲げる事項を事前に公表しなければならない。 (1) 議題 (2) 開催日時 (3) 開催場所 (4) その他必要と認める事項

北広島市市民参加条例   (市民参加の方法)  第 6 条 市の機関は、前条第 1 項の規定に基づき市民参加を求めるときは、次に掲げる方法(以下「市民参加手続」といいます。)により実施するものとします。  (1) ワークショップ(市の政策等について、市民と市の機関の間又は市民同士の自由な議論により市民の意見を集約することを目的とする会合をいいます。以下同じです。)の開催 (5) 市民投票(投票により広く市民の意思を確認することをいいます。以下同じです。)の実施 2 市の機関は、より多くの市民の意見を反映させるため、積極的に複数の市民参加手続を実施するよう努めるものとします。   (ワークショップ) 第7条 市の機関は、対象事項について複数の市民と一定の合意形成を図り、及びその意見の基本的な方向性を把握する必要があるときは、ワークショップを開催します。  2 市の機関がワークショップを開催しようとするときは、開催の日時及び場所、討議の議題等をあらかじめ公表するとともに、その討議に必要な資料を作成するものとします。 3 市の機関は、ワークショップを開催したときは、その記録を作成し、公表するものとします。

西東京市市民参加条例    第5節 市民ワークショップ (市民ワークショップの開催)  第21条 実施機関は、課題、問題点等の抽出と選択を通して、複数の市民との一定の合意形成を図る必要がある場合は、市民と市及び市民同士の自由な議論により市民意見の方向性を見出すことを目的とする集まり(以下「市民ワークショップ」という。)を開催する。

→草津市の条例案で書かれていないこと  

 1.市民会議  2.ワークショップ  3.公聴会  4.政策提案制度  5.1つ以上の手法活用  

 次回は、このことに論及する。  その際に、草津市自治体基本条例から連なる(連ならないのかも?)関係条例の全体構成について整理する必要あり。  

 とりわけ、「市民参加」と「協働のまちづくり」がどのように使い分けされているのか、また、その理由について掘り下げて検討しなければならない。  

 参考として、山岡義典氏(法政大学現代福祉学部教授)の分類方法は以下のとおり。

 「市民参加とは、行政活動に市民の意見を反映するため、行政活動の企画立案から実施、評価に至るまで、市民が様々な形で参加すること」

 「協働とは市の実施機関と市民公益活動を行う団体が、行政活動について共同して取り組むこと」

草津市市民参加条例(案)の“ここが分からん!” その2.5

執筆 :まちづくり本舗 2012-10-17 0:28

  本題に入る前に、また別の“わからん”ことが出てきました。
それは、草津市自治体基本条例およびそれに連なる全体の体系です。

草津市自治体基本条例は、逐条解説書の中でその位置づけが次のとおり示されています。

・・・・ 同様の条例は、多くの自治体で制定されており、「自治基本条例」、「まちづくり条例」などの名称とされていますが、本市では『草津市自治体基本条例』としています。 それは、「地方自治」は「団体自治」と「住民自治」に分けられるところですが、本市の基本条例では地方分権の時代における自治体がどうあるべきかということから「団体自治」のしくみに重点を置いているためです。すなわち、法律や条例は、その対象となる人びとの行動を公権力により制御する機能を持つものであり、「住民自治」という市民の自主的なまちづくりの領域までをも制御することは好ましくないとの考えから、本市では「自治」基本条例ではなく、「自治体」基本条例としています。

要するに「住民自治」は市民の自主的なまちづくり領域であるから、「団体自治」のしくみに重点を置いて策定されたものが「自治体基本条例」だということなのだと。

これってマニフェスト違反なんじゃないのかなぁ・・・今から考えると。
どちらかと言うと、市民協働や協創のまちづくりの基本ルールを重視した自治基本条例じゃなきゃいけないはずだったと思います。

と言うのは、橋川市政1期目のマニフェスト「もっと草津」宣言では、政策4の「もっと透明!」の中で、市民との協働・協創のまちづくりの基本ルールを定めるとの趣旨で自治基本条例を制定すると書いてあるからです。
これが団体自治(=地方自治は国から独立した地域社会自らの団体によって行われるべきという概念)のしくみを重点として策定されたというなら、全くニュアンスが違います。
そう思うのは私だけかなぁ?

更に“わからん”ことは、それだったら、「住民自治」の領域について条例を作るというのは釈然としなしおかしいと思うのですが、平成26年度を目処に「(仮称)草津市協働のまちづくり条例」が策定されると公表されていることです。

「(仮称)草津市協働のまちづくり条例策定方針」では、条例の内容として「まちづくり協議会の位置け」「地域コミュニティの活性化(町内会加入促進、設立 地域コミュニティの活性化」「市民公益活動団体(NPO、ボランティア団体 など)の位置づけ、活動の推進」「まちづくり協議会、市民公益活動団体などへの支援」などが示されています。
この「(仮称)草津市協働のまちづくり条例」は、自治体基本条例とは体系的な関連性があるのか無いのか、あるいはどのような内容になるのかが現段階では“わからん”状態で本題に入るのもいかがなものかと自問自答しながらではありますが、先に進んでいきたいと思います。(続く)

草津市市民参加条例(案)の“ここが分からん!” その2

 

 前回、主語が「草津市」(自治体)なのか「わたくしたち」(市民?)なのか、文言が混在していて分かりにくいという趣旨のことを書きました。
 

 そもそも、こうした疑問を抱いた事の発端は草津市自治体基本条例の前文で記述されている「わたしたちは、ここに、市民のめざすまちづくりに応える地方政府としての市の役割を明らかにし、市の基本原則としくみを規定した最も基本となる条例を制定します。」という文面からです。
 

 日本国憲法では、前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と記述されていることからすると、自治体基本条例で言う「わたしたちは」という主語は、すなわち「草津市民は」と同義語だと考えて良いと思います。
(言葉の印象としては、「草津市民」より「わたしたち」の方が個人としての主体的関わりが大きいように感じます。)

  しかし、草津市自治体基本条例を草津市民が自ら作った「自分たち(わたくしたち)のものである」と主体的に考えている市民は果たしてどの程度存在しているのでしょうか。

 憲法問題では、「現行憲法は終戦からわずか1年余りの昭和21年11月3日に公布され、翌22年5月3日に施行されました。国中で新しい憲法ができたことをお祝いし、この日が憲法記念日として国民の祝日になっています。当時私は中学2年生でしたが、学校でも新憲法や民主主義について教えられたものです。しかし、よく勉強してみると、憲法は日本の民主化のために連合国側の強い意思に基づいて作られ、また、そのベースになったものは、日本に降伏を勧告し、戦後の対日処理方針を表明したポツダム宣言だと思うようになりました。特に憲法の前文にはそのことが強く表れていると思います。・・・・昭和30年に左右社会党が統一されたことに対抗し、当時の自由党と日本民主党が合同し、自由民主党が誕生しました。わが党は立党時から自主憲法の制定を党是として掲げています。」。」(保利耕輔・自民党憲法改正推進本部長)というように、日本国民が自ら主体的に作ったものでは無く、戦後に連合国側の強い意思によって作られたものであるから、自主的・主体的な自主憲法の制定を目指す、という考え方もあるようです。

 草津市自治体基本条例は、果たしていかほど市民の自主的・主体的な関わりを持って制定されたのか、またそうするためにどのようなアプローチやプロセスを経てきたのか・・・。
そのあたりの事から、再度検証する必要があるのではないかと考えています。

さて、ようやく本題に入ります。
(ここまでは蛇足だった!?・・・いや、そうでもありませんけど。)

 草津市では、「ごみ問題を考える草津市民会議」や「草津市総合計画策定市民会議」「草津まちづくり市民会議」(現在の市民協働円卓会議?)など、「市民会議」と名の付くものがあります。(一部は、過去形)
 

 この中で、「草津まちづくり市民会議」(解散)は、公民館のありように関する提言や自治基本条例の検討などを行われたことが記録に残っています。

 こうした市民会議(=公募により、応募者全員または比較的大人数で構成される協働型の方式)をどのように位置づけているのか、ということに関する疑問です。
 

 市民による企画提案や創造型の市民参加について、市民参加条例で記載されていない(と思うのですが・・・)理由が“分からん!”。 (続く) 
 

草津市市民参加条例(案)の“ここが分からん!”

 草津市では、草津市自治体基本条例で定める市民が市政に参加する権利に関する手続き等を規定する「草津市市民参加条例」(案)を策定されました。

そして、この条例案について平成24年10月1日(月)から平成24年10月31日(水)までの間、パブリックコメントが実施されていますので、ちょっと気になって読んでみました。

 条例案では、前文で制定の趣旨を次のとおり示しています。(説明のため、文節ごとに分割して番号を付けています。)

 草津市は、市政運営における最も基本となる上位規範として草津市自治体基本条例を制定し、その基本原則の一つとして「市民参加」を謳っています。(1)     

  私たち草津市民は、積極的に市政に参加することにより、私たちが持つ経験や知識を市政に生かし、地域コミュニティ活動をはじめとした様々なまちづくりの活動を通じ、草津がよりよいまちになるための担い手として行動することが大切であると考えます。(2) 

 市政運営においては、市民の有する多様性が尊重され、それを踏まえた市民参加が推進されることが重要であり、市民が積極的に市政に参加することによって、市政への信頼関係をつくることができます。また、市政運営における「市民ニーズの把握」「合意の形成」「計画・成果のパブリックチェック」「情報の共有・相互理解・交流」といった効果も大いに期待されるところです。(3) 

  このことから、草津市自治体基本条例のもと、市政に参加する権利を有する市民が、より積極的に市政に参加できるよう、必要な手続について規定する「草津市市民参加条例」をここに制定します。(4)

 

  この前文を読んでいると、誰がこの条例を定めるのかが“分からん!”。  ・・・と言うか、実に分かりにくい。

 基本的には、条例は自治体としての草津市が地方自治法に基づいて制定するものだと思うのですが、以外とこれが難問。

 前文の(1)の部分では、草津市は草津市自治体基本条例を制定し・・・とされています。しかし、その草津市自治体基本条例の前文を見ると「わたくしたちは、ここに、市民のめざすまちづくりに応える地方政府としての市の役割を明らかにし、市の基本原則としくみを規定した最も基本となる条例を制定します。」記述されています。

 草津市自治体基本条例を定めたのは「わたくしたち」=主権者たる市民であると位置づけられているのではないかと思いますが、条例案では草津市が自治体基本条例を制定したと変更されているのは一体どういうことなのでしょうか?

 一方で、自治体基本条例と同様に草津市市民参加条例は、「わたくしたち」=主権者たる市民が制定するものなのでしょうか?

 草津市自治体基本条例では、「草津市全体にとって必要な取組みを地方政府である草津市に信託します。」と記述されています。このことからも、草津市市民参加条例は市民が信託した自治体の草津市が制定するものなのだろうとは思います。

 しかし、条例案では「草津市は、・・・・草津市自治体基本条例を制定・・・」と書いてあることから、「あれっ?そうだったかなぁ」「市民が制定したんじゃ無かったんのかなぁ」と、なんとなく疑問が生まれ、次の「私たち草津市民は」のくだりから混乱が生じてしまったのです。

 私のようなあまのじゃくな人はあまり多くないとは思います。
きっと、自治体基本条例は市民がつくったものだけど、市民参加条例は自治体が制定するものだから基本条例前文で使われている「わたくしたち」はおかしいと考えて「草津市は」に変更されたんだろうなぁと推察できます。 また、市民参加条例前文(2)の文節で「私たち草津市民は」と記述しているのは、草津市民の立場から言うと市政に積極的に参加することが大切であり、(3)の文で行政の立場から市民参加による効果が期待できることが本条例制定の動機であると示したいのだろうと推察できます。

 でも、そういう意味のことを示したいとするならば、(2)と(3)の部分は、市民参加の必要性や効用を客観的立場で記述するなり、(1)の部分はあえて基本条例を草津市が制定したとは言わない方が余計な混乱を招かないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。(つづく)