草津市協働のまちづくり条例(案)に関する考察(その4)

【コミュニティ政策の歴史①】

今回の内容は、正直あまり面白く無いと思います。

読み飛ばしていただいても結構ですが、整理のために忘れ去られた?過去を振り返ってみることにします。

さて、歴史を振り返ると日本のコミュニティ政策は戦前の「部落会町内会等整備要項(1940年)」と高度経済成長期に出された「コミュニティ(近隣社会)に関する対策要綱(1971年)」によって大きなターニングポイントを迎えたと言われています。

「部落会町内会等整備要項」は、町内会などを戦時体制の一翼を担う国家の末端行政機関として制度化して国策を遂行するための組織として活用するというものです。

 

部落会町内会等整備要領

第一 目的

一 隣保団結の精神に基き市町村内住民を組織結合し万民翼贊の本旨に則り地方共同の任務を遂行せしむること

二 国民の道徳的錬成と精神的団結を図るの基礎組織たらしむること

三 国策を汎く国民に透徹せしめ国政万般の円滑なる運用に資せしむること

四 国民経済生活の地域的統制単位として統制経済の運用と国民生活の安定上必要なる機能を発揮せしむること

第二 組織  一 部落会及町内会

(一)市町村の区域を分ち村落には部落会、市街地には町内会を組織すること

(二)部落会及町内会の名称は適宜定むること

(三)部落会及町内会は区域内全戸を以て組織すること

(四)部落会及町内会は部落又は町内住民を基礎とする地域的組織たると共に市町村の補助的下部組織とすること

(五)部落会の区域は行政区基の他既存の部落的団体の区域を斟酌し地域的協同活動を爲すに適当なる区域とする

(六)町内会の区域は原則として都市の町若は丁目又は行政区の区域に依ること但し土地の状況に応じ必ずしも其の区域に依らざるとこを得ること

(七)必要あるときは適当なる区域に依り町内会連合会を組織することを得ること

(八)部落会及町内会に会長を置くこと会長の選任は地方の事情に応じ従来の慣行に従ひ部落又は町内住民の推薦其の他適当の方法に依るも形式的に尠くとも市町村長に於て之を選任乃至告示すること

(九)部落会及町内会は必要に応じ職員を置き得ること

(十)部落会及町内会には左の容量に依る常会を設くること  

 (イ)部落常会及町内常会は会長の招集に依り全戸集会すること但し区域内隣保班代表者を以て区域内全戸に代ふることを得ること  

 (ロ)部落常会及町内常会は第一の目的を達成する爲物心両面に亘り住民生活各般の事項を協議し住民相互の教化向上を図ること  

 (ハ)部落会及町内会区域内の各種会合は成るべく部落常会及び町内常会に統合すること

二 隣保班

(一)部落会及町内会の下に十戸内外の戸数より成る隣保班(名称適宜)を組織すること

(二)隣保班の組織に当りては五人組、十人組等の旧慣中存重すべきものは成るべく之を採り入るること

(三)隣保班は部落会又は町内会の隣保実行組織とすること

(四)隣保班には代表者(名称適宜)を置くこと

(五)隣保班の常会を開催すること

(六)必要あるときは隣保班の連合組織を設くることを得ること

三 市町村常会

(一)市町村(六大都市に在りては区以下同じ)に市町村常会(六大都市の区に在りては区常会以下同じ)を設置すること

(二)市町村常会は市町村長(六大都市の区に在りては区長)を中心とし部落会長、町内会長又は町内会連合会長及市町村内各種団体代表者其の他適当なる者を以て組織すること

(三)市町村常会は市町村内に於ける各種行政の総合的運営を図り其の他第一の目的を達成する爲必要なる各般の事項を協議すること

(四)市町村に於ける各種委員会等は成るべく市町村常会に統合すること

 

戦後、町内会や隣組がポツダム政令で禁止されて以降、国がコミュニティに対して直接関与することは避けられていました。

しかし1969年に国民生活審議会が「コミュニティ-生活の場における人間性の回復」と題した報告を出したことが大きな転機となりました。

この報告を受けて(主導して?)当時の自治省が「コミュニティ(近隣社会)に関する対策要綱」を策定。

これによって日本型コミュニティ政策が本格的に始まったと言われています。

この重要な転機となった背景は、「昭和の大合併」(1953年の町村合併促進法施行、新市町村建設促進法によって9,868あった基礎自治体が1961年に3,472の約3分の1に減少)で、地方自治の基礎である地域コミュニティの希薄化が懸念されていたことが要因の一つだと思われます。

この状況は、1995年の合併特例法に始まり2005年から2006年にかけてピークを迎えた市町村の合併によって、市町村数が3,234から1,821に減少したいわゆる「平成の大合併」後の現在の状況と良く似ているのでは無いでしょうか。

 

 

市町村合併の歴史

参考までに、「平成の大合併」が行われた背景は、地方分権の推進や少子高齢化の進展、広域的な行政需要の増大ならびに行政改革の推進の必要性であるとされています。

 

「平成の合併」の背景

 

「コミュニティ(近隣社会)に関する対策要綱」は、「住民が望ましい近隣生活を営むことができるような基礎的な地域社会をつくるため、新しいコミュニティづくりに資する施策をすすめる」と小学校区程度の規模のモデル・コミュニティ政策を推進した訳ですが、その政策の基礎となっている1969年の国民生活審議会報告「コミュニティ-生活の場にお ける人間性の回復」について、次回は詳しく見ていきたいと思います。(つづく)

 

 

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