公開ディスカッションに向けての問題整理(最終回) 

現在パブリックコメントに付されている「第5次草津市総合計画 第2期基本計画(案)」(以下、第2期基本計画案と略す)とマニフェスト(ロードマップ)を見比べてみました。

その結果、第2期基本計画案の中には、殆どのマニフェスト関連事業が位置づけられていることが分かりました。中には3回も重複して掲載されている事業もあります。

関連付されていない事業は僅か2つの事業。
マニフェストの施策39に書かれている「自転車専用レーン等の整備」および施策40の「新交通システムの検討」の2件だけです。そのいずれも「草津市総合交通戦略」を策定する中で検討することになっています。

第2期基本計画案は3つのリーディング・プロジェクト(草津川跡地の空間整備、中心市街地の活性化、コミュニティ活動の推進)を軸として、分野別の施策のほとんどを網羅する形でマニフェストが関連づけられているのです。

このことから、市長マニフェスト「『さらに』草津宣言」は第2期基本計画との合致を想定されているものであるということが分かりました。第2期基本計画案とロードマップとの大きな違いは、4年間の予算が掲載されていることではないかと思います。

ここに来て、残る疑問はこうです。

「だったら何故『ロードマップ』が必要なのか!?」

あるニュース番組ではありませんが、ズバッと言いますけど「はっきり言ってロードマップは必要無いんじゃないですか!」。

ロードマップがあるから、妙な混乱や分かりにくさが付きまとってしまうんです。

素直に「マニフェストは草津市の最上位計画である第2期基本計画に落とし込んで実現させます」ということで良いのです。そうでないと辻褄が合いませんから。

というのは、草津市は前期のマニフェスト「『もっと』草津宣言」に基づいて草津市自治体基本条例を策定しました。
「自治基本条例」では無く、あえて「自治体基本条例」とされている点など疑問の多い条例(こちらを参照)ではありますが、「市は、市政運営ならびに条例の制定、解釈および運営に当たっては、この条例を基本としなければならない。」と定めている訳ですから、これに逆らうことはできません。まして、この条例を策定した現職市長なら尚更です。

そして、草津市自治体基本条例では第4章「市政運営」の中で、次のとおり明記しています。

 

自治体基本条例13条

この条例の第13条6項では「市の政策は、緊急を要するもののほかは、総合計画によるものとする。」と定めています。

すなわち、突然起こった不測の事態など緊急を要する以外の通常の施策は、総合計画に基づいて実施しなければならないのです。
いくら、マニフェストと言ってもこれに関連づける以外の方法で事業を実施することなどできませんし、やってはいけないのです。

だから、ロードマップという名称の政策は市長がマニフェストに基づいて実施する総合計画とは別の計画では無く、極端な言い方をすると総合計画の中に位置づけられて初めて実施が許されるものです。(「政策」と「施策」の違いウンヌンは長くなるので省略しますが。)

このように説明すると、「総合計画に基づきて政策を行わなければならないんだったら、誰が市長になっても同じだしマニフェストなんか意味が無いのでは?」と思う人がいるかもしれません。

でも、ご心配無く。ちゃんと方法が決められています。

第13条5項で「市は、市長の任期ごとに基本計画を策定する。」と謳っています。

これがどういう意味かについては、逐条解説書で「第5項では、現在、多くの首長がいわゆるマニフェスト(選挙公約)を掲げて当選することが通例になってきていることを踏まえ、本市においても、マニフェストを市の政策の中に盛り込み、その政策と総合計画との整合を図り、市は市長の任期に合わせて基本計画を策定することとしています。」

マニフェストは、ロードマップとして政策の中に盛り込むのでは無く、総合計画とに整合を図りながら基本計画に落とし込めば良いのです。

ロードマップアンケート2こうじゃないと、例えば「『もっと草津』宣言 ロードマップに関する市民意識調査」(2011年8月)や「平成23年度草津市のまちづくりについての市民意識調査結果報告書」(2012年3月実施)など、今後も重複するアンケートをそれぞれ実施しなければならなくなるし、行政コストや業務負担が増大することになります。

ロードマップアンケート

「じゃぁ、総合計画そのものが気に食わなければどうするの?」ということを心配する人もいるかも知れません。

ご安心ください。第13条8項で「市は、総合計画を見直すことができる。」と明記していますので。

「今日の急激な地域経済社会の変動の中にあって、10年後の理想像を描いた総合計画(基本構想)が本当に機能するのか?」「そもそも、基本計画なんて時代にそぐわないから不用だ!」と考える方々も沢山おられます。

鳥取県知事時代の片山善博氏(元総務大臣)が、それまでの総合計画のあり方に疑問を持ち総合計画に頼らない県政を確立したことはよく知られています。

こうした事情もあって、平成23年に地方自治法が一部改正され、地方公共団体に義務付けられていた基本構想の策定義務が撤廃されました。

地方自治法で撤廃された基本構想を、草津市はあえて自治体基本条例の中で議会の議決が必要なものとして義務化したというのであれば、それに従うか、もしくは改正のための訴えを起こさなければなりません。しかし、現時点では「この条項を撤廃すべし」という声は耳に入ってきませんから、この決まりで施策を実施するというのが筋です。

このことから今後、草津市におけるマニフェストの基本ベースは、選挙の時点で策定されている基本構想の問題点を指摘し(あるいは同意し)その変更(あるいは実現)を訴え、それを実現するための基本計画案がマニフェストの中の施策として掲げられ、当選後はしっかり基本計画に組み込んで実行するというスタイルになるのかもしれません。そうじゃない奇抜なものも出てくるかも知れませんが・・・。

 

これまで連載で書いてきた私の疑問は、ロードマップという中間項があることで、ものの本質が見えにくくなっているところから来ているように思います。

是非とも、ストレートで分かり易い、そして誰もが関わりやすい市政運営が図られることを期待してこの論評を閉じます。(おわり)

 

 

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