未分類」カテゴリーアーカイブ

議会基本条例について(5)

 みなさん、「くさつ市民☆インフォメーション」(http://shimin.info/) というサイトをご存知ですか?  このサイトは、「論だん草津社」が運営し、草津市の様々な情報を収集・発信するポータルサイトですが、大変便利な機能があります。トップページに「草津市議会議員サイト更新情報(独自調査)」というコーナーが設置されていて、ホームページを設置している市議が発信する最新情報やフェイスブックを知ることができます。

 今回の連載では、草津市議会基本条例について調べていますが、市議の間でもこれに関連する情報発信が盛んに行われています。

 例えば、日本共産党議員団の「くさつ民報No1192号」では、「議会基本条例9月議会提案見送り」とのタイトルで「議決事件の拡大や自治体基本条例との整合性確保について、議員間の認識が必ずしも一致していないとの異論が出され、議会基本条例の全会一致での制定をめざす観点から、9月議会への提案は先送りとなりました」と報じています。

 また、西垣和美議員のフェイスブック(9月7日のタイムライン)には、「委員会としては、3年間の委員の議論を経て、市民説明会も開催し、パブリックコメントも実施して満を持しての9月でありましたが、大変残念です」と述べた後、「きっかけは、市長側からの、総合計画の議決事件の拡大への意見の通知からです。」と、議案の提案が先送りとなった理由を示しています。更に「執行部から議会にもの申す的な意見の通知をされる」ことに対して疑問を呈すると同時に、「議会での合意形成の取り方は、難しいものです」と議会内の温度差や理解を得ることの難しさが語られています。

 これに対して、杉江昇議員が「西垣さん 正義を以て前に進もう!!」「分権ってなんなんやろぉ。質の高い民主主義を表明せなアカンやろぉ。」といったコメントでシェアしています。

 西村隆行議員のサイトでは、9月議会での議案提出が出来なかった理由として「全会一致で提案しようと議会として決めていたのですが、24人の草津市議会議員の認識が一致していなかったからです。」とした上で、「これからは、11月定例会での提案を目指し、草津市議会全議員でしっかりと議論し、認識を一致できるように努力したいと思っております」と今後の取組について決意を示されています。

 このような情報を入手するのに「くさつ市民☆インフォメーション」は大変便利なサイトだと思いますので、皆さんも是非ご活用されてはいかがでしょうか。

 

議会の議決事項(その2)

 

 さて、今回題材とするのは、名古屋市議会による名古屋市中期戦略ビジョンの修正議決に対して、河村市長がこの議決は議会の権限を超えるものであると主張し、議決の取消しを求めた裁判です。

 

 名古屋市中期戦略ビジョンは、「名古屋市基本構想の長期的な展望を持ちつつ新しい時代の流れに対応した市政の基本的な方向性を示す新たな総合計画を策定することを企図し22年11月に策定し、平成24年度までを計画期間」としていた計画です。

 この中期ビジョンの位置づけについて、草津市に当てはめてみると、「草津市自治体基本条例」の第13条で「市は、市政運営の最上位の計画として市民の参加を得て総合計画を策定し、総合的かつ計画的に市政を運営しなければならない。」「2 総合計画は、目指すべき将来像を定めた長期の基本構想と、基本構想の実現のための中期の基本計画によって構成する。」としており、この中の基本計画が名古屋市中期戦略ビジョンに該当するものだと考えられます。

 さて、名古屋市中期戦略ビジョンが議決事項となったのは、議員提案によって平成22年3月16日に制定された「市会の議決すべき事件等に関する条例」で次のとおり示されているからです。

名古屋市の「市会の議決すべき事件等に関する条例」(平成22年3月16日条例第1号)

(趣旨)

第1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第96条第2項の規定に基づき、市会において議決すべき事件を定めるとともに、次条第1号に規定する基本構想及び総合計画の立案段階から市会が積極的な役割を果たすことにより、もって市民の視点に立った効果的な行政の推進に資することを目的とする。

(議決すべき事件)

第2条 自治法第96条第2項の規定に基づく市会において議決すべき事件は、次のとおりとする。

(1) 基本構想(本市における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための構想をいう。以下同じ。)及び総合計画(基本構想に基づき、長期的な展望に立った市政全般に係る政策及び施策の基本的な方向性を総合的かつ体系的に定める計画をいう。以下同じ。)の策定、変更(総合計画にあっては、軽微な変更を除く。以下同じ。)又は廃止

(2) 名古屋港管理組合設立に伴い、本市が愛知県及び名古屋港管理組合と締結する職員の身分、財産等に関する協定

(立案過程における報告)

第3条 市長は、基本構想又は総合計画の策定又は変更をしようとするときは、その立案過程において、基本構想又は総合計画の策定の目的又は変更の理由及びその案の概要を所管の常任委員会に報告しなければならない。

(実施状況の報告)

第4条 市長は、毎年度、総合計画に係る実施状況を取りまとめ、その概要を市会に報告しなければならない。

(市長への意見)

第5条 市会は、社会経済情勢の変化等の理由により、基本構想又は総合計画の変更又は廃止をする必要があると認めるときは、市長に対し、意見を述べることができる。

 

 裁判に先駆けて、名古屋市の河村市長はこの議決が議会の権限を越えるものであるとして、地方自治法176条5項に基づき愛知県知事に対し審査の申立てを行いました。 しかし、審査の結果、 愛知県知事は地方自治法255条の5に基づく自治紛争処理委員の審理を経て、同申立てを棄却する旨の裁定をしたという経緯があります。

 そして、この裁定を不服として、平成23年3月15日に訴訟を起こしたのです。

 裁判は、名古屋市長が原告となり、平成22年9月28日に行った平成22年再議第3号「名古屋市中期戦略ビジョンに対する再議について」に対する議決を取り消すよう求めたものですが、これに対して、名古屋市地方裁判所は次のとおり判決を下しました。

クリックすると裁判所サイトへ

クリックすると裁判所サイトへ

 

 棄却理由として、条例の趣旨としては総合計画策定に係る議案の提出権については市長にあるとしながらも、「(地方自治法)148条は,普通地方公共団体の長が当該団体の事務を一般的に管理執行する権限を有する旨を規定した包括的権限規定であり,また,同法149条は,普通地方公共団体の長の担任事務を概括的に例示したものにすぎず,これらの規定は,総合計画の策定権及び提案権が原告に専属するとの立論の根拠となるものではない」として、「修正権について,原告の事務の管理執行に係る個別具体的な内容に踏み込んだ修正を行うことは許されないとの制約を受けるものではないというべきである」と判断しています。

 また、市長側からマニフェストで掲げたキーワードが修正されたことについて、問題提起されていますが、これに対しては裁判所の判断は次のとおりです。

名古屋市地方裁判所の判決文より抜粋

「地域委員会」や「冷暖房のいらないまち」という施策用語は,市政運営の中核的な基本理念であり,原告が市長選挙に際してマニフェストにも掲げることにより市民の負託を得て提示された重要なキーワードであるとともに,当該施策の実現を志向し,民意をその目標に向かって誘導するマジックワードであって,このような基本理念を,被告が安易に一方的に変更することは,原告が実現しようとする重要施策の趣旨を大幅に損なうことになる旨主張する。(ウ)

しかしながら,証拠(甲8)によれば,本件戦略ビジョン原案において,地域委員会をその内容に含む施策1の表題が「地域主体のまちづくりをすすめます」となっており,また,同施策の「施策の展開」の表中には,「住民が主体となったまちづくりの推進」として,地域委員会の創設のほかに,学区連絡協議会など地域団体による自主的活動を支援し,住民が主体となったまちづくりの推進を図ることが記載されていること,また,本件戦略ビジョン原案において,施策38の表題は「冷暖房のいらないまちをめざします」となっているが,同施策の「基本方針」には「自然の力を積極的に活用し,冷暖房のみに頼ることなく,快適に過ごすことができるまちを実現します」と記載されていることが認められ,これらの記載に鑑みれば,本件修正2ないし5及び18は,本件戦略ビジョン原案に定める施策の基本的な方向性を変更するものではないということができる。 そうすると,本件修正2ないし5及び18は,総合計画の策定に係る議案の提出権を原告に専属させた趣旨を損なうものではないから,被告の修正権の範囲を超えるものではないというべきである。

 

 (次回につづく)