書籍からの引用文 |
コミュニティとは、共同生活の相互行為を十分に保証するような共同関心が、その成員によって認められているところの社会的統一体である。 ある領域がコミュニティの名に価するには、それより広い領域からそれが何程か区別されなければならず、共同生活はその領域の境界が何らかの意味をもつい くつかの独自の特徴をもっている。(中略)コミュニティは、社会生活の、つまり社会的存在の共同生活の焦点であるが、アソシエーションは、ある共同の関心 または諸関心の追及のために明確に設立された社会生活の組織体である。 アソシエーションは部分的であり、コミュニティは統合的である。一つのアソシエーションの成員は、多くの他の違ったアソシエーションの成員になることが出 来る。コミュニティ内には幾多のアソシエーションが存在し得るばかりでなく、敵対的なアソシエーションでさえ存在出来る。(中略)しかし、コミュニティは どの最大のアソシエーションよりも広く自由なものである。それは、アソシエーションがそこから出現し、アソシエーションがそこに整序されるとしても、アソ シエーションでは完全に充足されないもっと重大な共同生活なのである。 |
「生活の場において、市民としての自主性と責任を自覚した個人及び家庭を構成主体として、地域性と各種の共通目標を持った、開放的でしかも構成員相互に信頼感のある集団」 「従来の古い地域共同体とは異なり、住民の自主性と責任制に基づいて、多様化する各種の住民要求と創意を実現する集団」 |
(コミュニティの定義) 第3条 この条例において、次に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 地域コミュニティ 居住地域における日常生活の中での出会い、多様な地域活動への参加等を通して形成される人と人とのつながり (2) 目的別コミュニティ 福祉、環境、教育、文化、スポーツ等に対する共通の関心に支えられた活動によって形成される人と人とのつながり (3) 電子コミュニティ インターネットその他高度情報通信ネットワークを通して、時間的及び場所的に制約されることなく形成される人と人とのつながり ▲武蔵野市コミュニティ条例▲ |
(コミュニティ論のパラダイム転換) コミュニティの古典的概念は前述のように、地域性と共同性(共同感情)を基調としていた。しかし、それは19世紀末頃の社会を念頭に置いたものだった。 それが第一次大戦後の1920 年代以降、機械文明、とくに交通通信手段の発達で、生活圏が拡大し、社会的流動性も増した。それにつれて、地域の共同性が薄れ、近隣社会 (neighborhood)が変質あるいは崩壊していったのである。そこでコミュニティ研究のパラダイム転換が試みられた。 それらの視点のひとつは、コミュニティを社会システムの一局面と考え、共同性や連帯性、共同感情を改めてとらえ直すことである。次は、T.パーソンズが 主張したことだが、地域性の中身について、@生活を営む場としての居住地、A生活を支える職場(多くは職住分離となっている)、B行政サービスや公権力行 使に関わる基礎的自治体の範域、C交流や参加のベースとなるハード、ソフトのコミュニケーション・プロセス、の4つを設定し、総合的にアプローチすること である。 ▲PDFファイル▲ |
〜以上、部落会・町内会の基本的な特徴のみを概観したが、いづれも集団というより社会のもつ特徴という性格が強く、したがって部落会・町内会については、 その基盤となる村落社会ないしは町内社会(コミュニティ)と、これらの社会の上に結成された管理運営組織としての部落会・町内会(アソシエーション)とを 一応区別しておくことが適当である。 |
〜NPOは本来、社会的使命を実現したいと思っている個人が、自分の意思で参加していくもので、決して行政側が強いるものではないと考えていた。 しか し、安塚区のNPOの場合は、最初の仕掛けから行政中心。断れない雰囲気の中で、1家庭1人が加入して設立されたものだった。いわば目的地を知らされてい ない船に、乗せられたようなものだ。幸せ感を伴うようなものでは全くないし、はっきり言って迷惑である。 −中略− こうした全住民参加型のNPOは、− 中略−本当のNPOとは言えない。真の民意から出発するという基本から外れて、事業内容も必ずしも住民が求めているものとは違っているNPO−中略−に補 助金を与え続けることには大きな疑問を持つ。本当のボランティア精神に心を置いた、住民ニーズに根ざしているNPOだけが認証されるべきだ。〜 |
(1)自治の仕組みづくりのイメージ 学区における自治の仕組みづくりは、学区コミュニティにおいて展開される活動内容と、それを動かす主体の形成(地域組織づくり)、さらには地域での社会的 な認知を含め、まちづくりの課題解決に向けて継続して取り組むことができる体制づくりまでを視野に入れ、イメージすることが大切です。 (展開パターン) @ 自治連合会が中心となるパターン 自治連合会は、多くの場合、行政との連絡調整や単位自治会ではできない活動を担っています。学区を単位とした文化祭や体育祭などは自治連合会が中心になって行われています。さらに、自治連合会が主体となってまちづくりを推進している動きも多く見られます。 このパターンでは、自治会の連合組織である自治連合会が主体となって、取り組みを推進することが考えられます。 −事例省略− 【パターンの特徴と課題】 ○ 連合自治会は、地域の包括的な地縁組織である自治会の連合組織であり、また学区内の各種団体とも連携を図っているため、地域全体として総合的に取り組む体制づくりが可能です。 ○ 自治会を通じてほとんどの住民が意思形成に関与できます。 ○ 担い手が自治会役員と重なり、一部の人の負担が大きくなる可能性があるため、一個人としての参加者を可能な限り開拓していくことが求められます。 ○ 将来的に役員の高齢化、固定化等により、柔軟で幅広い分野の活動を行うことに支障をきたさないよう、各種団体や活動グループ、NPO等との連携が求められます。 A 公民館・市民センターが拠点となるパターン 地域における生涯学習やコミュニティ活動の拠点となる公民館、あるいは行政の支所機能を持つ市民センターが学区コミュニティにおける活動の中心となるパ ターンです。実際には、学区内の住民組織である自治連合会や各種団体と連携を図りながら、活動を進めている場合が多いようです。 −一部事例省略− ◇草津市「地域協働学校」 草津市では、「子どもと大人の協働」、「子どもの健やかな成長」、「地域学習社会の形成」を目的とした地域協働学校を推進し、子どもから大人まで、さまざ まな年代の人が世代を越えてかかわり、学びあい、その成果を次世代につなげていく地域社会を構築するための事業を展開しています。 平成14 年度から学校が週5日制に移行するのを見越して、まず、学校を開放していこうという立場で、平成10 年度から取り組んでいます。運営は、委員会形式をとり、原則として、学校の教諭と公民館の指導員が事務局を受け持つこととなっています(代表には、学区自 治連合会長がつくことが多い)。 たとえば、草津市の志津学区の場合、推進委員会は、教育関係者、福祉関係者、地域活動関係者、学習サークル関係者、学識経験者など20 名以内で構成しています。協力団体は、学区自治連合会、学区社会福祉協議会、地区老人クラブ連合会、小学校PTA、幼稚園、民生児童委員、子ども会指導者 連絡協議会、学区体育振興会、公民館自主教室代表、小学校、公民館など学区内のほぼすべての活動組織を網羅する推進体制が形作られています。 【パターンの特徴と課題】 ○ 公民館においては、生涯学習や青少年健全育成等の活動がすでに行われており、活動の芽があります。 ○ 活動の拠点となる施設や備品が存在し、職員が常駐し、地域でもよく利用されていることから、住民活動のセンター的役割を担うことができます。 ○ 社会教育施設としての位置づけに固執すると幅広い分野の活動が阻害される可能性があります。 ○ 施設の幅広い活用を可能とするための条件整備を図る必要があります。 B 学校が拠点となるパターン 完全学校週5日制の実施や総合学習の機会を通じて、地域と学校との関わりが深まっています。子どもを中心としたコミュニティ活動では、地域の公民館とともに学校の役割が大切です。 −事例省略− 【パターンの特徴と課題】 ○ PTAや学童保育等の活動がすでに行われており、親どうしのつながりがあります。 ○ 子育て環境づくり、青少年健全育成など、教育や人づくりと関連のある活動は取り組みやすいと思われます。さらに学区のまちづくりなど、幅広い分野の活動を展開していくためには、より多くの地域団体の連携・協力が必要と思われます。 ○ 施設の活用や職員の対応等、学校側の受入態勢の整備を図る必要があります。 C まちづくり協議会が中心となるパターン 学区の自治会や各種団体、NPOなどが協議会を組織し、学区コミュニティの諸活動に取り組むパターンです。 −事例省略− 【パターンの特徴と課題】 ○ 数多くの地域の諸団体が参画し、協議組織を結成して、地域の課題解決をも視野に入れて、学区全体の包括的なまちづくり活動をめざしていることに特徴があります。 ○ 既存団体だけでなく、個人やグループ、NPOの参加も可能であり、多彩な人材や専門的な団体が持つ知識、ノウハウを活用することができます。 ○ テーマに応じて多様な組織形態を取ることが可能です。 ○ 新たに組織を立ち上げることになり、既存組織との折り合いや住民の理解が必要です。また、立ち上げの初期段階での行政等の支援も重要です。 ○ 役員の改選時期等、協議会立ち上げの時期を調整する必要があります。 ○ 学区内の一部の人々による取り組みに終わらないよう、自治連合会や社会福祉協議会、青少年育成団体、同和教育推進協議会など既存団体との連携が必要です。 ○ 継続した取り組みを行える仕組みづくりが必要です。 D 特定のテーマをもとに新たな学区コミュニティの活動を引き出そうとするパターン 福祉や教育、環境など特定のテーマを持った活動が中心になりながら、徐々に学区コミュニティ全体のまちづくりを考えていこうとするパターンです。 −事例省略− 【パターンの特徴と課題】 ○ 町並み保全や身近な環境づくりなど、地域の特色を生かしたテ−マや自分たちの関心のあるテーマに取り組むことができ、どの地域でも比較的取り組みやすいと思われます。 ○ @〜Cに比べて、主体形成や取り組む体制等で不安定さがあるかもしれませんが、住民の主体的な活動が大きく発展していく可能性があります。 ○ 地域全体へと広がりあるものにしていくためには、地域の幅広い団体やグループの関わりが必要です。 ○ 継続した取り組みが行えるような仕組みづくりが必要です。 E 権限委譲の仕組みづくりを工夫しているパターン 地域分権を視野に入れ、行財政の権限を地域に委譲する仕組みづくりの工夫をしているパターンです。 −事例省略− |
(2)学区コミュニティ組織の運営にあたって 学区コミュニティ組織の運営にあたって留意すべきことをまとめます。 @ 学区における自治の機能を高める 1) 生活充実型から課題解決型の活動へ 住民自らが、自分たちが地域課題を解決していく担い手として自覚し成長していくことが求められます。 2) 住民の意見集約 学区エリアに住む住民それぞれの意見を反映し、すべての住民が参加できるような体制・仕組みを作っていくことが求められます。 3) 自治会との連携、補完 単位自治会が蓄積してきた活動をベースに学区単位の活動につなげていくこと、また、学区コミュニティの活動と自治会の活動、両方が支え合って厚みのあるコミュニティを形成していくことが重要です。 A 個人やNPOが力を発揮できる環境づくり 自覚を持って活動している個人やNPOがコミュニティで力を発揮できるようにするためには、風通しのよい地域の人間関係づくりが大切です。 地域の中の個人や組織がつながり、また地域外の専門家や活動団体などとも交流、協力し合えるような関係を築くことが、地域に活力を生み出すことにつながっていきます。 B 多様な主体が参画できる環境づくり NPOやボランティアも含め、多くの組織、グループが結集できる仕組みが必要です。そのためには、地域全体のことを考え、地域に立脚した立場で、それぞれの団体をつないでいくコーディネーションが行える主体づくりが重要です。 また、意思決定の過程では、なるべくコミュニティを構成する会員の意思が反映される仕組みとしつつ、実行の段階では専門的な部会やグループに思い切って任せるような仕組みも有効と思われます。 C 行政の関わり方 地域の課題解決を住民自らが担えるようなコミュニティの形成が求められています。 地域の自立心をはぐくむためには、住民側の高い自覚がなくてはなりませんが、行政側もこれまでの自治会依存の行政スタイルから脱却していかなければなりません。 また、地域と行政の関わり方は、地域特性があり一律にはいきませんが、地域の実態や地域資源、住民のニーズを把握し、住民活動を支援していく、そんなパートナーとしての新たな関係づくりが求められています。 |
コミュニティ施策の問題点
コミュニティ施策の問題点について調べてみました。
参考図書は、地方自治政策U「自治体・住民・地域社会」(編著者:倉沢 進)です。
コミュニティ施策の出発点となった国民生活審議会の報告「コミュニティ 〜生活の場における人間性の回復〜」(1969)について、本書は次のように分析しています。
この報告書が示しているのは、日本の伝統的な地域社会の在り方を現代社会に適合的でないとして、一方で伝統回帰を否定し、他方で現状批判にもとづいてコミュニティを推進しようとする立場である。 ―中略― このような認識に関しては、さまざまな評価と批判があり得る。一つには、伝統的な地域社会は本当に崩壊したのか、町内会・自治会が全国的に高い組織率を もっているなど、日本の伝統的な地域社会は健在ではないのか、という見方である。一つには都市社会学者の間にも、人々は多くの人間関係に囲まれて、現在で もそれに満足しており、孤独感をもった人は少数派であるという反論がある。 さらに、事実に関する認識ではなく、当為、つまりどうあるべきか、どうすべきかにかかわる異論である。もっとも人々は孤独であって良いという見方、人間 関係が必要であることは認めるにしても、地域社会の中で求められる必要はないという見方もある。地縁的というよりも、関心縁的な関係の方が、人々が求める ものであるという社会学者のなかに多くの支持者を持つ見方がある。関連するもう一つの異論は、地域生活の在り方のような問題は、人々の自由にまかせるべき であり、審議会提案などによって推進されるべきではないという考え方である。この見方から以後進められたコミュニティ施策を「行政主導」として批判する立 場は有力であった。 |
伝統的地域社会(農村共同体的地縁組織)が崩壊し、都市型のコミュニティ形成が求められるというのは一般的(特に、草津市のように都市化が著しいまちに
住んでいる私たち)には「そうだなぁ」と思えるのですが、実際には伝統的地域社会が健在な地域も多くありますし、町内会の組織率は低下傾向にあるとはい
え、崩壊している状態であるとは言えず、伝統的地域社会では都市化傾向の強い地域よりも活発な取り組みが行われているのも一つの事実です。
また、現代都市社会では人々は様々な形での相互関係を持っているので、マイナス面として孤独感を持っているというのではなく、あえて孤独(干渉から逃れ
る)を求めている人が多いようです。特に、マンション住まいの人の中には、地域のしがらみから開放されたいがために一軒家ではなくあえてマンション住まい
を選択する方々もいます。さらに、コミュニティの問題に行政が介入すべきでは無いとの意見も妥当な見解です。
しかしながら、現状が最善であってそれを変えるべき社会環境の変化が無いのであれば別ですが、そうでないとするならば次善の策を講じることが当然です。
また、政策そのものを否定することには賛同することはできません。
何故ならば、これだけ複雑化した社会状況において、すべてを自然にまかせるだけで問題を 放置するならば、例えば地球規模での自然環境保全の問題や人口問題、南北間の経済格差、雇用の問題、少子高齢化問題、多発・凶悪化する犯罪問題等、を解決
することはできません。これと同様に、政策をおこなうこと自身を否定することはできないからです。
また、NPOに対する施策にしても特定非営利活動促進法もその一つですが、それ以上に自治体の適切な施策によって、その可能性を開花させることが求められているのと同様に、そうしたことも含めたより洗練されたコミュニティ施策が求められていると思います。
そこで、これまでのコミュニティ施策がどのように行われ、その問題点はどこにあるのかを考えてみることにします。
本書では、このことについて次のように記述しています。
国民生活審議会のコミュニティ小委員会報告以来、コミュニティ形成を目標とする行政施策が全国各地で展開されるようになった。その中で先導的な役割を果た
したのは、自治省のモデル・コミュニティ施策であった。1971年度から始められたこの施策は、各省の類似の施策の基準ともなり、また全国の市区町村のコ
ミュニティモデルともなった。そしてこの施策が、コミュニティ・センターの建設を中心的な事業としていたことから、コミュニティ・センターの建設は、これ
をきっかけに全国的に広がった。 |
つまり、コミュニティ施策として取られた方策は、コミュニティというソフト面での施策であるはずのものが、ハード整備を中心に行われたことが問題なのです。
これと同じような事例は、今でも数多くあります。例えば農林水産振興の事業については、農道をつくったり用水工事をしたり、ダムや港を整備したりといっ
たものが中心に行われています。こうしたハード中心のコミュニティ施策になった理由に一つとして、本書では先ほどの引用のあとに続けて次のように記述して
います。
自
治省は1971年「コミュニティ(近隣社会)に関する対策要綱」を公表する。これは自治体施策先導のため、モデル・コミュニティの指定、整備を行うもので
あった。具体的には小学校区を標準とするモデル地区を選定し、地区の特性に合わせた生活環境整備と、住民の自主的なコミュニティ活動を促進することであっ
た。当初は市町村が物的施設計画を立て、住民がコミュニティ活動に関する計画を策定する事とされたが、この施策への助言のため自治省に設けられたコミュニ
ティ研究会の意見により、コミュニティ計画は住民の自由意思によるべきもので、行政側がこれを取り纏めることは不適当とされ、市町村のまとめるコミュニ
ティ計画からは除かれることになった。 |
確かに、行政がコミュニティの自由な意思を尊重せずに行政補完組織として利用することは避けなければならないという点では正論だと思うのですが、「コミュニティ計画とは施設計画であるという誤った認識を、市町村に与える結果をもたらした。」という面もあったようです。
コミュニティ行政の矮小化によって、ハードや形式的な施策を実施すればコミュニティ施策は終わりだというのでは、まさしく「仏つくって魂入れず」です。
このコミュニティ行政の矮小化について、本書では次のように批判しています。
矮小化の最大の理由は、これまでの行政慣行と、コミュニティの理念との矛盾である。コミュニティ研究会は、センター建設そのものを、コミュニティイ
シュー(地域社会で、住民・行政が解決すべき問題点)として位置づけ、このイシューを梃子としてコミュニティ活動の活性化を図ることを提案したが、単年度
予算の消化に追われる自治体は、住民参加といってもせいぜい1、2回の住民説明会を開いて要望を聞くという程度に終わった。自主管理、自主運営は慣例にな
い、公の施設を特定の住民が占有物にしては困る、行政がきちんと管理すべきではないか、などの戸惑いが生じた。住民の総意による運営にするためには、町内
会始め各種団体の代表からなる協議会方式が無難とされ、原則個人参加の協議会による管理、有給ボランティアによる日常管理などはなかなか実現しなかった。 |
このように、かつてのコミュニティ施策には様々な問題点があるようです。しかし、一方で地域住民が地域の問題処理に参加し、意思決定を行う単位としてコ
ミュニティを認知・促進し、その活動を行う上での物的基礎ができたという面では、これを今後活かしていくことができればプラス面として捉えることができる
のではないでしょうか。
ちなみに、コミュニティ施策については時代によって変化してきています。
そのことについて、日本都市センター自主研究(平成12 年度)報告書『近隣自治とコミュニティ〜自治体のコミュニティ政策と「自治的コミュニティ」の展望〜』では、過去のコミュニティ施策とその変遷を次のように整理しています。
○第1期(包括型コミュニティに重心:1970 年代) ・包括的・総合的な地域課題や政策テーマに対応 ・伝統的な住民自治組織とは異なる開かれたコミュニティ組織を志向 ・コミュニティ施設整備に重点 ○第2期(テーマ型コミュニティの誕生・形成:1980〜90 年代) ・包括型コミュニティと並行して、まちづくり、地域福祉、防災等、個別のテーマに対応 ・自治会・町内会中心型、NPO・ボランティア中心型等、構成メンバーは多数 ○第3期(自治的コミュニティ:2000 年代〜) ・再び包括型へ?(第1期と第2期のドッキング) ・多種多様な個別の政策テーマを重視しながらも、地域の総合的な視点から、住民自治・近隣自治を確立していくことに重心が置かれる時代 ・近隣自治機構の仕組みが要請されている。 ・市民と行政との緊張感あるパートナーシップが重要 ・自治会・町内会は構成員の一員 |
町内会の課題(4)
(1)G 「共同生活の環坑・条件の保全」にかんする問題 a 活動内容の問題 「町会の婦人部副部長を一〇年しましたが、ただ研修と称して旅行や観劇会くらいしかできませんでした。」 共同生活を守り、発展させるという町内会の目標活動が、一応の水準のもとで充足されると、レクレーション活動 中心のものになってしまう、ということに対する批判的意見がある。 (2)I 「町内社会の統合・調整」にかんする問題 a 伝統主義による拘束や停滞の問題 「団結が固いのか既成の雰囲気が排他的で新しい芽が出にくく進歩が難しい。」 「前年と同じことをやらなかったり、何か別のことをやろうとすると上から頭を押さえられた。」 b よそ者意識、排他主義の問題 「"よそ"から来てその土地の人々の考え方の中になかなか溶け込むことができず、かなりのストレスになっていま す。」 「四年前に引っ越して来たが、近隣の十軒程度にタオルを持参し挨拶回りをしたが、何ヵ月かの後、地区長が住んで. いる隣の筋に住む人々から、"挨拶がない"との声が流れてきて、さらに挨拶回りをしたが、非常に不快であった。」 「町内会活動については単身でしかもアパート住まいの私共では、どうしても入って行きにくい所です。」 (3)L 「合意形成と共同感仙の衰出」にかんする問題 a 運営の非民主性、ボス的な支配の問題 「画一的であり、集団支配的であり、封建主義の匂いすら感じることが多々有る。真の自由、個性、民主主義の理想、個人の幸福とは何か、をもう少し考えるべきである。」 「住民にとって必要な環境保全以外の、催し物(盆踊り、夜店など)に、役員に輸番制でなった時に義務づけられる のは、行き過ぎと感じる。実行委員という形で参加の要あり。」 b 相互信頼、人間関係の問題 「人間関係の難しさは常に感じる。派閥ができやすいとか、すぐ感情的になるとか人間として、杜会人として未熟な 人が多い。また、心で思っていることと言うことが違ったりして、ずいぶん悩んだこともあります。」 「皆一人一人立派なことを言うが、その意見がどのような内容をもち、どのように波及するかなど先のことを考えな い意見が多く、それらが勝手に交じりあい、とんでもない塗言が飛び交ったりして惑わされることが多かった。」 c 住民の揚力が得にくい、役員のなり手がいないという問題 「運動会などで参加をお願いしても、休日返上までしてやることはない、というようなことで協力が得られない」 「マンション管理組合の総会を行っても全四〇戸から出席者は一〇人弱でいつも決まった顔触れです。なかなか役員 を受けたがらない。」 「役員はみんなが順番を受け持つという風習(ホッペタマワシ一があります。そのようなことだから、一期間名前を 連ねればそれで良しという考えのものが多い。」 「役員といっても仕事はすべて妻がやることで夫の協力が得られない、または夫が協力することができないような運 営方式はおかしいと感じる。」 「町内会でもPTAでも役員だけが本気で働いて、町内の人が行事に参加してくれない。自分の趣味であれば対外的 なものにも積極的に参加するのに。」 この点はどの町内会でももっとも悩みの多い問題であり、上田市では、「役員のなり手がいない」三〇%、「会員の 関心が弱い」二三%(複数回答)であり、同じく、寝屋川市では五四%、三八%、津山市では三七%、二一%である。 d 信教の自由の問題 「わが町の二五年の歴史のなかで、個人的に役員が持ち込んだ地蔵盆や隣町の氏神にたいしての寄付や奉仕に、ある 程度の強要のようなものがあり、住民の三分の一くらいが反発している。私も役員会において宗教の自由をおかしてはいけないと発言し、それ以後三年余りは宗 教的行事は別サイドに役員をつくり別行動をしていたが、役員が改選され再び町内会と宗教的行事がいっしょになったりするので困っている。」 (4)A 「公的・共同的資源醐違」にかんする問題 a 町内会費にかんする問題 「組長になり、区費などのお金を集めるとき居留守をされたり、何度訪ねても留守、お金を立て替えた後でもらえなかったりで、お金がかかわると大変です。」 「町内会会費の値上げに苦労した。」 なお、「十分な予算がない」という会長は、寝屋川市では三二%、津山市では五一%である。 b 寄付の問題 「寄付金など、自治会長から額を提示される。」 「赤十字だの赤い羽根など五〇〇円以上とか一〇〇〇円以上とか決められています。個人の自由を無視しています。 けれど、"払わない"という勇気はありません。」 c 行政などからの依頼業務が多すぎる この点については、意見の表記がなぜか見られなかった。しかし、これに対する不満は非常に多いと思われる。た とえば、町内会の全市的体制のある上田市においては五二%の町内会が悩みとして指摘している。また、寝屋川市で は二四%、津山市では一七%である。 c 特権を私的に利用する役員が生じる 「自治会長などが市会、府会選挙に関与していることが多々あるように思う。また、市、府発注の土木建築工事などにも一定の業者を推薦し、受注しやすく手伝ってワイロを受け取るなど……」 |
京都では応仁の乱(1467年〜77年)の廃墟の中から、暴力に対抗し生活の安全を守るために隣保団結の地域団体である『町』が結成されていった。条坊制
の『町』とは異なって、交差する街路をもって区切られた、街路をはさむ両側を以って一町を形成していったのであった。戦国の世にあってこれらの町はさらに
『町』の結合体たる『組町』を形成し、上京五組、下京三組をなし、それぞれ『上京中』『下京中』として連合体へと発展した。このような町は、十四世紀以来
成長してきた封建的自営農民によって結成された相互扶助の自治的な共同体組織=『惣』結合に応ずるものであり、都市に成長してきた商工業者、金融業者たち
の座的な組織の前身としていた。土一揆や武士の狼ぜきにたいする防衛の中で商工業者、金融業者と一般住民の連携が進み、地縁的な自治組織たる『町』を形成
したのであった。しかし、信長入京によって事態は大きく変貌する。信長の意向に対抗した上京は焼き討ちされ、その圧倒的な武装力の前に屈服させられたので
ある。信長はかえってこの町組組織を統治の手段として利用した。犯罪人の告発逮捕、地子銭の徴収、労役賦課、御貸米の利米の収納など。ここに、町組は自
治・自衛の住民組織から行政機構の補助組織へと大きな変化をこうむったのである。 |
私たちが自主的に地域に関わり、地域をつくっていく地域主権の社会においては、地域の課題解決を行政だけに任せておくのではなく、県民自ら取り組むことが重要になってきます。 これまで「公的領域は行政が担うもの」と考えられてきましたが、これからは、県民も行政と共に「公」を担う主体となるという考え方が、新しい時代の 「公」の考え方です。新しい時代の「公」のあり方のもとで、「行政が担う『公』」の内容を見直すとともに、県民、行政など多様な主体が担う領域について も、社会全体で支えるしくみを整えていくことが必要となります。 「行政が主に担う領域」は、社会基盤整備、制度・しくみ・環境の整備など行政が整備した方が効率的であることや県民では担えないような公共サービスの提 供などを県民の付託に基づき、行政が主となり担当する公的領域を表します。「行政が主に担う領域」においては、国、県、市町村が役割分担のもと、個々の取 組に応じた県民などの参画・協力を得て、業務に従事します。 「多様な主体で担う領域」は、行政も含めた地域の多様な主体が、役割分担のもとで、協働しながら共に担う公的領域を表します。具体的には、自然環境を守 り育てる活動、子どもたちが健やかに育つための地域での取組など県民が主となって行い、行政が支援する地域のための多様な「公」の活動が考えられます。 多様な主体とは…県民一人ひとり、NPO、地域の団体、企業、市町村、県など地域のために活動する個人、団体などのことを総じて、「多様な主体」と表しています。 |