議会基本条例について(3)

東京財団は、日本財団により設立された非営利・独立の民間シンクタンクで、「対症療法ではなく、生活・文化に根ざした」政策提言・普及活動や「グローバルに展開する人材育成プログラム」などを行っている公益財団法人です。
そして、今回取り上げるのは、2010年に東京財団から出された「市民参加と情報公開の仕組みをつくれ」と題され、副題には、「地方議会改革のための議会基本条例『東京財団モデル』」と示されている政策提言です。

 

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この政策提言は、日本財団の研究プロジェクト「地方議会の改革プロジェクト」における研究成果だとされ、プロジェクトリーダーには元佐賀市長の木下敏行氏やメンバーには民主党政権時の消費者庁長官で元我孫子市長の福島浩彦氏、全国に先駆けて議会基本条例を策定した栗山町の元議会事務局長の中尾修氏などが名を連ねています。

「東京財団モデル」では、議会基本条例の必須要件として以下の3項目が示されています。

 

1. 議会報告会(意見交換会など)
議会が機関(合議体)として一体となり、民意をくみ取る仕組みを市民が気軽に体験する機会である。市民からの信頼の獲得には、議会が市民生活の場に出向くことは不可欠である。市民が議会を通じて政策決定過程に関与する機会である。

2. 請願・陳情者の意見陳述
市民が抱える個別具体的な懸案事項について議会で意見を述べることを希望した場合、それを保障しなければならない。慣例などの運営実態として実施している議会もあるが、市民の権利として条例に明文化することで市民に周知することが重要である。

3.議員間の自由討議
議会は意見をぶつけ合い、結論を導き出すところである。議決行為よりも決定に至る過程(プロセス)が持つ実質的意義を重視することで議員・議会の存在意義が明確になる。議論は議会の醍醐味である。

 

そして、この必須3項目が2010年当時に制定されていた議会基本条例で盛り込まれているかどうかを分析した結果、66%が概ねクリアーしており、完全に合致している(義務規定またはそれに準ずる規定や要綱、実施実態がある)のが栗山町や伊賀市など8議会であると示しています。

そこで、「草津市議会基本条例(案)」についても、この基準に基づいて確認してみたいと思います。
「草津市議会基本条例(案)」では、この3つの必須条件とされるものがどのように規定されているのでしょうか?
まず、議会報告会については第8条で「議会は、議会活動を報告するとともに、市民の意見を聴く場として、定期的に議会報告会を行うものとする。」と定めています。そして、逐条解説(素案)では、「議会報告会の運営等の詳細については、別に要領等で定めます。」としています。

栗山町議会基本条例では、第4条8項で「議会は、前7項の規定に関する実効性を高める方策として、全議員の出席のもとに町民に対する議会報告会を少なくとも年1回開催して、議会の説明責任を果たすとともに、これらの事項に関して町民の意見を聴取して議会運営の改善を図るものとする。」と実施要件や回数を示しているものと比べると具体性に欠けるものですが、逐条解説(素案)で示されている「別に定める要綱等」で要件や実施方法が具体的に示されるようです。

(参考1)栗山町議会の議会報告会調査レポート
(参考2)栗山町議会報告会開催要領

この方法は、伊賀市と同じです。
伊賀市の場合は「伊賀市議会議会報告会実施要綱」を定めており、その中で「報告会は班単位とし、定例会後、概ね1ヵ月以内に開催する。」「報告会は、住民自治協議会単位(住民自治協議会が設立されていない地区については自治会単位)で開催し、1協議会年1回以上とする。」と規定し、具体的な時期・回数・報告内容、方法などについての詳細を定めています。

(参考3)伊賀市議会議会報告会実施要綱

 

次に、請願・陳情者の意見陳述について、「東京財団モデル」では「市民が抱える個別具体的な懸案事項について議会で意見を述べることを希望した場合、それを保障しなければならない。慣例などの運営実態として実施している議会もあるが、市民の権利として条例に明文化することで市民に周知することが重要である。」と解説しています。

このことについて、「草津市議会基本条例(案)」では第7条2項で「委員会は、請願の審査において、紹介議員の説明後、必要に応じ請願者に意見を聴くことができる。」と定めています。
栗山町議会基本条例では、第4条4項に「議会は、請願及び陳情を町民による政策提案と位置づけるとともに、その審議においては、これら提案者の意見を聴く機会を設けなければならない。」と義務的なものと位置づけており、これと比べると少しトーンが低いように感じます。
なお、この項目についての評価が高い名寄市議会基本条例では、「議会は、提出された請願及び陳情を審査するに当たって、所管する委員会において提出者による意見を聴く機会を設けることを原則とする。」とされ、京丹後市議会基本条例においても同様に「議会は、請願及び陳情を市民による政策提言と位置づけ、その審議において必要があると認める場合は、提案者の説明、意見を聴く機会を設けなければならない。」というように、努力規定ではなく義務規定となっています。

3つ目の必須項目である議員間の自由討議について、「草津市議会基本条例(案)」では、第9条で「議員は、議会が議員による討議の場であることを認識し、本会議および委員会の審議において、議員間の十分な討議を尽くし、合意形成に努めるとともに、その経過および結果について市民への説明責任を十分に果たさなければならない。」「議長および委員長は、議員間の討議を中心とした運営に努めるものとする。」と示しています。また、第10条では「議会は、議員間討議を尽くし、意見集約がなされた内容について、条例の提案、議案の修正、決議等に向けた政策立案を行い、または市長等に対し政策提言を行うものとする。」としています。

この項目については、栗山町議会基本条例では「議員は、議会が言論の府であること及び合議制の機関であることを十分に認識し、議員相互間の自由な討議の推進を重んじなければならない。」とした上で、更に踏み込んで「議会は、議員による討論の広場であることを十分に認識し、議長は、町長等に対する本会議等への出席要請を必要最小限にとどめ、議員相互間の討議を中心に運営しなければならない。」と規定しています。

同様に、伊賀市議会基本条例では「議会が言論の府であること及び合議制機関であることを十分認識し、議員間の自由な討議を重んじること。」「 議会は、言論の府であることを十分に認識し、議長は、市長等に対する会議等への出席要請を必要最小限にとどめ、議員相互間の自由討議を中心に運営しなければならない。」「議会は、本会議及び委員会において、議員、委員会及び市長提出議案並びに市民提案に関して審議し結論を出す場合、議員相互間の議論を尽くして合意形成に努めるものとする。」と定めています。(つづく)

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